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- 作者: 連城三紀彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/04
- メディア: 文庫
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超絶技巧のミステリ短編集。
連城作品には「男女間の情念」をプロットに組み込んだ作品が多いという傾向があるが、本書もその例に漏れず、夫婦の間(親子の間という場合も)に存在する激しい(もしくは歪んだ)情念が引き起こす事件を描いた作品集になっている。
収録作はそれぞれトッリキーかつ無駄のない構成を有し、作者の紡ぐ美文がそれに彩りを添え、物語の終焉後に独特の読後感を残す。
特に圧巻は表題作である。トリックと人物設定とストーリーが交互作用して、妖しくも美しいゲシュタルトを形成するという、本格としてもサスペンスとしてもハードボイルドとしても傑作という素晴らしい作品。全ミステリ読み必読のマスターピース。漫画でいうと『デビルマン』クラス。ちょっと嘘。
ちなみに関口苑生が解説で
「連城はダメ男を描くのが抜群に上手い作家で、物語の中心はいつもそのダメ男たちであり、登場する女性はその相対物に過ぎない(大意)」
と述べていたのだが、卓見だと思う。
「ダメ男とそのコントラストとしての女性キャラ」というテーゼは、西澤保彦や米澤穂信あたりの諸作と比較しても面白いかも。
未読の人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい作品なのだが、残念ながら現在は版元品切れ中。