向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏

ホラー・ミステリ。
前作「背の眼」で日本ホラー小説大賞特別賞を受賞した道尾秀介の受賞第一作。
小学生の視点から描かれる白昼夢めいた物語。友人の死体消失事件の謎を追う主人公パートと、死んだ友達の隣人パートに別れて話は進行する。
相変わらず構成は巧みだが、すっきりしない結末がホラーとしての味というよりもミステリとしての欠点と受け取れてしまい、私的に少し評価を下げた。
「一発かましたれ」的なスピリットは買うのだが、「本当に必要かこの設定?」や「ご都合主義な展開多いな」などといった不満に対して、最後に明かされる真相だけで説明責任を果たしているとは思えない。
構成のロジカルさは評価出来るが(特殊な原則に従って運行する世界観を上手く処理して本格作品に仕上げる手腕は認めざるを得ない)だからといってこの作品を素直に本格として評価できるかというと違う気がする。ただしこれは作品の性格そのものが弱点であると言うより、私の趣味や資質が作品と折り会わなかった結果が所以であることを強調しておく。
この世界観が魅力的に感じられかつ結末を受け入れられる度量の持ち主(あるいは偏った人)が読んだならば、楽しい読書になるかもしれない。