顔のない敵 (カッパ・ノベルス)

顔のない敵 (カッパ・ノベルス)

ミステリ。
対人地雷を扱ったミステリを中心にした短編集。収録作では唯一、デビュー作のみ地雷を扱った作品ではない(物語中に地雷が登場しない話もあるが)。
対人地雷というテーマをプロットレベルに落とし込む技術は素晴らしい。地雷及びそれにまつわる付随物の特質を生かしてトリックやプロットを構築し、それが見事に作品に昇華されているため「とってつけた」感があまり感じられない。
各編とも本格としてかなりの完成度を誇り、いわゆる逆説や論理のアクロバットの妙を味わえる好作品揃い。
だが最近作の三編はやや水準が下がっており、これは少々残念。構成は良いが、ロジックは練り込み不足かもしれない。
さらに付言すると、各作品に通底するヒューマニティへの(無条件、無批判な)信奉が読んでいて薄ら寒いというか、狂気を感じさせる。
とはいっても、今年出た(うちで僕が読んだ)ミステリ中でもベスト級の作品集であることは間違いない。