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- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/09/30
- メディア: 文庫
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「種の起源」というあまりにセンセーショナルな著作を発表し当時保守派のイギリス人から目の敵にされていた学者、チャールズ・ダーウィンを主人公に据えた本格ミステリ。
物語は、ダーウィンが博物学者として同乗した海軍船ビーグル号が世界一周の航海中に立ち寄った島、ガラパゴスで起こった連続殺人事件を中心に展開する。
次々と起こる不可能犯罪は(解説でも語られているとおり)カーを彷彿させガラパゴスという島の不気味な雰囲気にマッチしている。その謎を解き明かす探偵の推理も端正で本格としての完成度は高い。
「ダーウィンの思想が周囲にもたらす影響」というメインテーマを同じようなアナロジーで作品の冒頭とラストに持ってきた構成も上手いと思う。
作品のテーマとミステリとしてのプロットを巧みに絡めた良作。
ただし、手堅くはあるが総じて地味な印象の作品だとも言える。作者は娯楽に徹しきれない人かもしれない。