ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

ミステリ。
チームバチスタの栄光」でこのミス大賞を受賞した海道尊の第二作品。 表題はフローレンス・ナイチンゲールと鳥のナイチンゲールダブルミーニングであり、どちらも登場人物の一人(ていうかヒロイン)を指す。シャアが乗っていたMSではない。
抽象的な表現だけど、前作よりも平べったいような印象。物語の中心となる謎にオリジナリティがなく、起こる事件も地味で魅力薄。だがそこかしこに謎の解決への伏線が張り巡らされており、その点ではフェアでバランスのとれた構成だとも言える。
かるがゆえに、総体として作品を評価しようと試みると、上記のような印象を抱いてしまうのである。
前作でラノベ的と評されたキャラクター性は、よりメリハリを利かせられていて個性を掴みとり易くなっているため個体認識もスムースに行える。翻意すれば、中音がやや貧弱なドンシャリな造りとも。
読んでいて退屈しない作品だとは思うが、細部の詰めは総じて甘めだ。
とはいえ、この厚さを一気に読ませる筆力は大したものである。登場人物の掛け合いやSF的な部分の描写力は本書最大の読ませどころだろう。
ミステリとしての精度に拘らない、単純に娯楽作を求める人にはおすすめ。