「人間の手がまだ触れない」ロバート・シェクリィ
(まいどのことながら)SF短編集。作者はフレドリック・ブラウンやヘンリィ・カットナーなどと並び賞されるユーモアSFの名手。その手になるものには社会や文明を批判した作品が多くみられる。まぁ諷刺が多いんですね、この作者は。皮肉と言うか。この本の収録作もその傾向が強くて、一読すれば下敷きにされたであろう社会的テーマがすぐ連想できるようになっています。それは多分話のモチーフ(社会的テーマ)に読者の目を向けようとする作者の意図でしょうが。寓話的な話が多いのだけど、極度に抽象化されるのでなく、同じアナロジーの元ネタ(ネタ元)が容易く知れるようにしてあります。読後感は星新一ショートショートみたいだった。科学理論や現象とかも物語を成立させるための道具立てでしかないんで、それ自体に萌えるのは難しいでしょうね。寓意に満ちたオハナシとして楽しみましょう。