銃とチョコレート (ミステリーランド)

銃とチョコレート (ミステリーランド)

乙一という作家は迫害され傷つけられた少年少女がその生き苦しい状況から抜け出す過程とその結果として成長する様を描く能力に長けており、その手の作品(傑作)を多数上梓している。
本作もその例に漏れず、父親を失った貧しい少年が裏切りや失望に満ちた冒険を通じて成長し、尊厳を回復させるという物語になっている。
脇を固める登場人物がうまく造型されていて(必ずしも魅力的な人物ではない)、主人公の対人感情を読者が共感しやすいように心が配られているのだなと感心した。
構成も主題の処理も水準以上で、個人的にはミステリーランドでもベスト級の作品だと思う。