異色作家短篇集
ブラウンの魅力を表す言葉として最も適切なものはなんだろうかと考えたのだが、「突飛」としかいいようのない作風ばかりなのでそれでいいですか。
一読すれば判ることだが、彼の作品の中核をなしているのは(解説で坂田靖子が語るとおり)「ふざけた設定」と「切れ味鋭いオチ」である(その二つ以外の特徴は全体に漂うユーモラスさやあからさまさ、わかりやすさ、メディアが作品に頻出すること、メタなネタが多いことなど)
まずアイデアありきなので、作品がもつ面白さは、その着想がいかに独特かつ魅力的であるかにかかってくる。そのアイデアを敷衍して物語の取っ掛かりとオチに結び付けるのだから当然のことだ。
しかしながら本書に収められた作品中、表題作以外にあまり完成度の高い話は見あたらなかった。少なくともブラウン初読の方に向く本ではないと考える。(「電獣ヴェヴァリ」は後半部のみ傑作だと思うけど前半が冗長すぎる)
これからブラウンを読もうという方には「真っ白な嘘」か「未来世界から来た男」をお勧めする。構成の練られ方もオチの切れ味も断然上。
だが、ブラウンらしさに慣れていて彼の作品から醸し出される「空気」が好きならば手にとって損はないかと。