少女には向かない職業桜庭一樹少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)
ミステリ(?)。今をときめく桜庭一樹の新刊であります。どうでもいい話ですが、僕は「サクラバ」というと「一樹」や「和志」よりも「コハル」をまず連想してしまいます。五の二。ちなみに本書が初めて読む桜庭作品になります。
内容はミステリよりも犯罪小説に近い感じかと思います。「普通の少女」である主人公が「殺人」に至る過程を周囲の状況から内面におけるコンフリクトまで丁寧に描写しているあたりは流石に巧みです。さらにミステリ的趣向でサスペンスフルに仕上げ、読者を最後まで飽きさせない造りになっているあたり、作者はかなり侮れないエンタメ力の持ち主ですね。
ただ、物語中における「伏線」をどこまで読者は信頼していいのか、作者の匙加減ひとつで展開が決定可能になってしまっている点など(クライマックスの場面とか)は不満に感じられました。
まぁ、桜庭一樹が「少女」を武器にしてミステリ界のマーケットをある程度席巻している作家だということを、深い感銘をもって納得できたような気がします。桜庭の描く「少女」に女性は(ときには郷愁を伴いつつ)共感を覚え、男性は(興味はあるがあるていど無知なものに対しての好奇心を刺激されつつ)惹かれるんじゃないですか。
で、雑談。少年犯罪っていうかこの手のジャンルの作品で「殺人」を行う少年少女って、「現在の(閉塞的な)状況を打破する手段」として「殺人」を行うケースが多いですね。貴志祐介の「青の炎」とか乙一の「死にぞこないの青」とか(青つながりだけど特に意味はないと思う)。そういえば「死にぞこないの青」の帯に書いてあった言葉が、非常に印象的かつ示唆に富んでいたのですよ。引用しますと、「僕を助けてくれるのは、人間ではない」というもの。多分、「少女」じゃ荷が勝ちすぎるんですね。もちろん少年でも。「人間でない存在」じゃないと。
ちなみに「死にぞこないの青」は、本書とテーマがかぶる部分も多いので併読をお奨めします。
追記;僕は桜庭一樹のファンではないのでサイン会には行ってません