ヴァカ姉弟

今日は親戚の通夜である。そこで私は受付の手伝いという使命を授かった。といっても香典の名前と金額を書き出すだけの簡単な仕事だったので、滞りなく作業は終了し、後は親戚一堂と会食するだけとなった。私は故人と二回ほどしか顔を合わせたことが無く、話をしたこともなかったので、何も感慨がわかないまま食事は進んでいく。まわりのおじさん達と酒を酌み交わしながらの会話自体はそれなりに面白く、いつの間にか自分もほろ酔いになっていく。目は遠くの席に座った女の子に据えつつも、おじさんの繰り広げる昔話(それはそれで面白い)に相槌を打つ。結局、ビールを3壜ほど空けたところでお開きになり、私はうちの車で帰ることに。両親、姉、甥二人と同乗、運転は母親。私と父は既に出来上がりつつあった。完全体とまではいかずとも17号くらいは吸収していた。それにつられたのか、姉もハイテンションであった。素面なのは母親だけだった。「うちの家庭は母親でもっているのだな」と母親に対し感謝の念を抱いた夜でありました。

帰りの車中ずっと私と姉は馬鹿な話をしつづけた。クイーンの「グレイテスト・ヒッツ」をかけたときにもそれは続いていた。以下は抜粋である。
姉 「あ、クイーンだ。懐かしいねぇ、友達のうちでよく聴いたよ」
どろ「僕も友達のうちで聴きましたね。10年位前ですけど」
姉 「『友だちのうちのCD』で聴くのがクイーンの基本なんだよ。多分」
どろ「『友達の友達が体験した話』が怪談の基本なように、ですか」
姉 「そうそう、車内にいる六人中二人がそうなんだから、かなりの確率だよー」
どろ「こんな偏った標本で統計出していいのかな」
姉 「(突然唄い出す)がりれお〜、がりれお〜」
どろ「狭いんだから車ん中で唄うな!小さなお子様も乗っているというのに…」
姉 「それ、あたしんちの子供だし」
どろ「なおさらだよ」
姉 「ばーいせこ、ばーいせこ〜。これチャリンコ乗ってる時、脳で流れるよねー」
どろ「ハナシ、聞いて下さい」
姉 「聞いてるって。別にクイーン聴いたってAIDSになるとは限らないよ」
どろ「そんな心配、してないし」
姉 「はばなぐったい、はばなぐったい。化粧品のCMソングだったねこれは」
どろ「飛行機が連隊で飛ぶヤツでしたっけ」
姉 「そうそう。ちゃんとお友達にもススめてあげたよ、わたしゃ」
どろ「それは違うCMだって!」

こんな会話が本当に繰り広げられていた。
客観的にみると、やな姉弟だな。