私は基本的に無趣味な人間なのですが、数少ない趣味の一つに「バッティングセンターに行くこと」というのがあります。といっても、ただその施設の中に入るだけじゃダメで、実際に打席に立つことが主な目的であります。これは以前、地元のバッティングセンターに行ったときの話です。その日も私はその施設でツルツルの軟球を軸回転と遠心力と体重移動で遠くに飛ばすことに夢中になっていました。遠くに飛ばすにはやはり力を込めてスウィングしなければいけませんし、大振りしてもバットが引っこ抜けないように両手をガチガチに握りしめる必要があります。そんな力んだ状態で(名医の処置かと思わせる程に縫い目が目立たなくなった)ツルツルの軟球を打っても、ヒット性の当たりは10球のうち精々2〜3本です。しかしそれ以外の方法をしらない私はその愚直なスウィングを繰り返しては、ゴロを量産していました。そんなメジャー一年目の松井もかくや、というほどのゴロ製造機になった私の隣の打席に一人の女の子が入ってきました。「おいおいそんな細腕で思い通りのスウィングが実現できる程この業界甘くないゼ」なんて台詞を私が心のなかでうそぶいているのと、隣の女子のバットから快音が響くまでの時間差、およそ20秒。それはそれは呆れる程のライナーを彼女のバットはマスプロダクツでした。私の成人男性としてのちっぽけなプライドなど、神成さんの窓ガラスよろしく彼女の打球に砕かれました。私と彼女のバッティング技術の差は歴然です。おそらく彼女の腕力、握力、体重のどれをとっても私よりも少ないでしょう。しかし彼女はそれらの力をスムーズにツルツルの軟球に乗せることができるのです。腹立たしいことですが。「・・・所詮、バッティングなんてさぁ、軸回転が遠心力で体重移動なんだよね〜」なんて強がってみても、もう駄目です。ぼくはもう疲れました。体力の限界です。永久に不滅です。。。結局その日は敗北感にうちひしがれて帰りました。当然、夕日の土手を自転車で。しかし、今になって思い返すと、まぁ、なんていうか、私と彼女の違いって「ホームランバッターとアベレージヒッターの差」なのではないかと。。。自分ではそうニラんでいるのですが。