「秘密」東野圭吾秘密
みすてり。この本をバイト中(待機中)に読んでいたら同僚から「初読なんですか?」と質問された。そうだよ、と答えると驚いていた。確かに高校時代から積読になっており、今まで読まなかった積極的理由はあまりない。強いて言えば「周りが持ち上げると読む気がしなくなる」という持ち前のへそ曲がり根性が発揮されたためですか。
それが、今なんとなく東野ブームなので(「容疑者Xの献身」が傑作だったため)読んでみました。オチがどうなるか具体的には知りませんでしたが、なんとなく予想できましたし(いかにも東野がやりそうなことだから)そういう意味での意外性はなかったです。
しかし、小説としての完成度の高さには驚かされっぱなしでしたよ。小道具とさまざまな登場人物の感情を絡めて描写し、それらの伏線を物語の要所々々でつなぎ合わせてみせる手腕には翻弄されっぱなしでした。
で、この話、個人的には「家族の喪失」というテーマの作品なんだと思うんです。けっして単純ないい話じゃなくて。ただ、やるせなくて切なくなるような。
主人公と生き残った妻(体は娘)の関係性が今まで築き上げてきたものから逸脱し、さらには全く違ったものになった上にさらにオチがあれですからねぇ。脇を固める登場人物も何らかの形で家族を亡くしている人ばかりですし(逆に、そういう境遇じゃないキャラは物語であまり重要視されていない。「喪失感」を主人公たちとは共有できないためでしょう)。

しかし妻(娘?)を失った男の悲しみの描写にはグッと来るものがあります。すげーよ圭吾。伊達に奥さんに逃げられてないね!(それは作品を上梓した後な気もするが)