長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))
「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー
ハードボイルド。今までハードボイルドというジャンルにはあまり手を伸ばさなかったため(原りょうくらいしか読まない)これが初めて読むチャンドラー作品である。
で、この世界的超有名作の感想なのだが、はっきり言って読んでいる途中で何度も投げ出しそうになった。
主人公であるフィリップ・マーロウがもう気持ち悪くて仕方がないのだ。なんでこんな身勝手なナルシストがハードボイルドの代名詞なのか正直理解できない。マッチョなのがそんなに好いことなのか?
物語も最初の事件が終わった後、200ページくらい退屈な展開がダラダラ続くし「こんな作品がハードボイルドの最高傑作なのかよ、これならロスマクのほうが全然いいじゃん」と思っていた。
しかし、最後まで読み進め、最後の有名な一文を読みおえたとき、不覚にも少し感動してしまった。
本書はミステリというよりはミステリの体裁をとったハードボイルド文学であり、事件の謎を解かれることも演出の一つでしかない。すべてのミステリ的要素はそれを描くための道具立てにすぎず、この物語の本質はフィリップ・マーロウとテリー・レノックスというふたりの男の友情譚だったのである。
そうなると不思議なことに、今まで違和感を感じていたやや気障な文章や主人公の台詞も、テーマがこんなロマンチックなものなのだからしようがないと思えてくる。
でも読了後もマーロウの言動に対する不快な印象は拭えぬままだった。価値観の相違ってやつすかね。
この感想を後輩Nに捧げ・・・たら怒られるか。。。