扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)
「扉は閉ざされたまま」石持浅海
倒叙ミステリ。実際に何か事件が起こったのか登場人物たちには確信が持てないので、密室を破らないまま探偵が真相を推理をするところが本作の特徴。伏線の張り方には感心させられるし、ラストのややひねくれたオチも楽しい。
でも気になるところもちらほら。
実際に死体が発見された訳でもなく、現場を検分したわけでもないので、探偵の推理は純粋にロジックのみで構成されている。ということになっているが、その推理(の扱われ方)にかなり不満がある。
探偵の語る推理は一応、筋が通っているように思えるが、それが実際に起こったことであると証明することは(物的証拠がないため)不可能なはずである。しかし本作では「蓋然性が高い」くらいの推理が、登場人物の賛同など作者の恣意性のみによって妥当性を保証されている。例えば、探偵が語る推理が反論可能なものでもすぐに犯人自体がその推理を認めてしまい、そうなるともうその推理の妥当性は検証されなかったりするのである。
これは,はっきり言ってかなり興醒めです。
読者は真相を最初から知っている(倒叙ものですから)ので、推理の向かう先が正解であったらあまりその筋道を検証したりしないと作者は考えているのでしょうか。全て確信犯だとしたら、かなり性格悪いね。
追記;動機について取りあげるの忘れてましたが、殺害の動機と密室を構成する動機が根を同じくしている点はかなり高評価ですわよ。