「新・世界の七不思議鯨統一郎
れきしみすてり。「邪馬台国はどこですか?」の姉妹編に位置付けられる連作短編集。前作よりも引用される文献や資料は少なめになっており、作者独自の歴史解釈の占める比重が高くなっている。その結果、よりアクロバティックかつ荒唐無稽な説が展開されトンデモなオチばかりの短編集に。。。(決してつまらなくはないのだが)
歴史資料(客観的事実)があまり出てこないと作中の解釈に説得力をもたせることが困難になることは自明であろうと思われるが、本書では前作以上に客観的事実(と思われるもの)による説の証明を怠ってしまっている。そうなると歴史ミステリはただの御伽噺になってしまうだろう。
特に本書は歴史解釈のみをミステリとして昇華した作品であるため、この証明の説得力(別にハッタリで構わないんですよ、論文じゃないんだから)をないがしろにしてしまうと、魅力がだいぶ損なわれてしまう。前作と同程度にその証明をきっちりやってくれていたらもっと興味深い作品になっていただろうことは確実である。