死のロングウォークスティーブン・キング
恩田陸夜のピクニック」読了記念として本書を手にとってみました。
近未来のアメリカで開催される国民的イベント「ロング・ウォーク」に参加した少年達の物語。この「ロング・ウォーク」、ルールがかなりシビアーで、おおまかに言えば「歩くスピードが時速4キロ以下になる度に警告を受け、3回以上警告を受けると射殺される」「100人の参加者が最後の1人になるまで続ける」というもの。なぜそんなものに出たがる?
主人公の少年は同じように参加した少年達と友情(もしくはそれに類似した連帯感)を育み、彼等と会話することでお互い励ましあったり、他愛ないゲームに興じることで気を紛らわせようとしたりするんですけど、そうこうしている間も他の参加者達の頭部は機関銃でミンチにされたりしてるんですよ。最初のうちは面識のない人たちしか殺されないけど、どんどん参加者が減っていってついに主人公と親交を深めていた少年も脱落していくんです。血を滴らせた臓物引きずって。もう「このゲームの参加者、優勝しても絶対トラウマ残っだろ」って殺しぶり。読んでていっそ清々しかったですが。そうそう、主人公の思春期真っ盛りぶりも読みどころですね。自分を応援してくれてる女の子にいきなりキスして尻をまさぐったり(当然そのせいで警告を受ける)、恋人のことを妄想しているうちに歩きながら射精したりとかなりの暴走を見せてくれます。
こんなふうにギャグとしか思えない場面もありますが(他にも主人公の排便シーンとか)、少年どうしがお互いに認めあいながらも自分以外はすべて敵であるという宿命を受け入れざるを得ないという境遇に絶望していくさま、なんていうシリアスな部分とかも淡々と描かれていたりします。さすがに上手いなぁ。
やっぱり壮絶な「ロングウォーク」の臨場感を堪能しつつ、徐々にパーソナリティが明かされ、存在感の厚みがましていく少年達に感情移入しながら読むのが正統派の読み方でしょうね。バトルロワイヤルみたいに。
バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)