「時間のかかる彫刻」シオドア・スタージョン
しつこいようだがSF短編集。ラブとノイローゼとアイロニーの作家スタージョンの紡ぎ出す幻想的な小話たち。いや、幻想ってよりも妄想に近いか。オルタナティブアイロニーがいっぱい出てきてくるんでこの作家自身が現実の人生で間違った選択をしたとでも思いこんでいるのかななんて考えちゃったよそりゃ五回も結婚すりゃなぁとか。
彼の作品には精神に変調をきたした人物がよく出てきてしかもそれが主人公だったりするもんだから読者が認識する小説世界もどこか歪んだものになってしまってさらにその歪みに物語が帰結する(オチがつく)ようなプロットであることも多くてどうにも読んでいて息苦しく感じてしまう。そのオチのつけ方はすごく巧くて職人的といってもいいんだけど逆にそのオチのために物語が存在しているような本末転倒な感覚が生じてしまっていてそれが息苦しさ窮屈さの原因でしょうか。
ちなみに表題作はヒューゴーとネビュラの二つの賞を獲得した作品である。なんでこの作品がダブルクラウンなのかは謎。たしかに面白いけど…そんなにスゴイ作品ですか?射干玉君は「アメリケンにとってはボンサーイが珍しかったんだろう」と言ってました。