デス・コレクターズ (文春文庫)

デス・コレクターズ (文春文庫)

ミステリ。
前作『百番目の男』も骨太の本格だったけど、今作はプロットの複雑さと完成度が一つ上のレベルに達してる。要素(伏線)の配列の美しさは相変わらずだし、要素同士の関係性に込められた意味と要素の数量自体が増加しているところに作者の構成力と手際よさ,そして筆力の向上を感じた。
単純なインパクトで比較すると、真相の「奇想」度は前作には及ばないかもしれない。しかし、謎の不可能性と合理的解決の間にある「落差」は、前作に勝るとも劣らない。
あと、登場人物たちの魅力も追記しておく。レギュラー陣による掛け合い描写は堂に入っている。題名にも採られているデス・コレクターズ(死の収集家)はガジェットとして面白いだけでなく、その性向すら犯人に利用されている(つまり作者によってプロットに組み込まれている)。
現代アメリカミステリ(かなりB級)と本格ミステリの融合。本格好きには是非とも読んで欲しい作品。
ただし、本文及び解説に前作の犯人を想起させかねない記述があるので、そういうのを気にされる方、先入観なしで読みたい方はまず前作から手にとることを強く勧める。