独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

ホラー。
本書は日本推理作家協会賞短編賞を受賞した表題作を含む八つの物語が収録された平山夢明の第一作品集である。この度、純粋なホラー作品としては初めて、このミス1位を獲得した。
ジャンルはホラーだが用いられる小説手法はバリエーションに富み、ミステリ的な構成の作品からSF風の世界観で展開する作品までと作風の幅が広く、読者を飽きさせない。作風ごとに文体や人物造型を全く変えるなど、作者のテクニシャン振りを存分に堪能できる作品集になっている。
個人的なベストは着想と構成と落ちが綺麗に纏まり決まった「Ωの聖餐」だが、地図の一人称で語られるというユニークな設定の表題作、今最も旬な海外SF作家グレッグ・イーガンを彷彿させる「オペラントの肖像」や「卵男」、特異すぎる登場人物と人体を破壊する際の描写と破壊方法のアイディアが楽しい「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」なども面白く読めた。ホントに高水準な作品ばかり。
フックが多いので、いろんな人にお薦めできる本だと思う。グロ描写に耐性があれば、という条件付きだけど。
たとえば小林泰三が好きな人だったら間違いなく楽しめるよね。