館島 (ミステリ・フロンティア)

館島 (ミステリ・フロンティア)

ミステリ。
東川篤哉東京創元社における第一作目となる本書は、作者が得意とするコメディタッチの本格推理小説。東川作品の例に漏れず、今作でも物語の前編に渡ってギャグが横溢するという構成をとっている。しかし時折、ギャグの中に真相へ至るための手掛かりが忍ばされていたりするので、たかがギャグと侮ってはいけない。
チェスタトンも名作『折れた剣』で「伏線を隠すならギャグの中へ」とブラウン神父の口から言わせてるしね。うそだけど。
事件の舞台となる「館」は瀬戸内海に浮かぶ小島に建てられたもの。ちなみにこの島、瀬戸大橋の橋梁の建設予定地にもなっている(事件は80年代に起こった、という設定なのである)。
読んで暫くすればトリックの種類は推し量れてしまうだろうし、そうなると犯人像もおぼろげに浮かび上がってくると思われる。しかし本書の魅力はフーダニットやハウダニットだけにあるのではなく、むしろ状況設定の必然性に対しての説明にこそあると筆者には感じられた。
本格特有の、細かい辻褄合わせの妙を楽しみたい人にはおすすめの作品。褒めてる様に思えないかもしれないけど褒めてますよ。