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- 作者: S・A・ステーマン,松村喜雄,藤田真利子
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1993/05
- メディア: 文庫
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世界三大ミステリ作家の1人である(おそらく)ステーマンの代表的な作品。本書には中編が2つ収録されている。
表題作「ウェンズ氏の切り札」は単純なトリック一発ネタ。もっと伏線を綿密に張っていれば引き締まった作品になったかもしれないけど…正直本格としてはイマイチ。現在のミステリに読み慣れた読者ならすぐに真相は判るだろうし。ただ、犯人がそうせざるを得なかった状況の作り方と次々容疑者が死んでいくというプロットの立て方は上手いです。あと話の落とし方も。
「ゼロ」は怪作。こちらの方はさらに本格から離れた作風でありネタバレしないで説明するのがむつかしい。骨格は本格なのだけど、全編を通じて雰囲気がどこかおかしい小説。登場人物に謎が多すぎる。結局、何者だったのか何が目的だったのだろうかわからない奴らばっかし。
上記のことからステーマンという作家はストーリーテラーとして優れており、トリック自体よりもその見せ方やプロットへの落とし込み方に拘る作風の持ち主であると言えると思う。