砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

SF。
シンプルな発想をシンプルなプロットにまとめた作品。しかし膨大な科学知識と圧倒的な描写力と怜悧な視線が、本書を非凡なSFへと至らしめている。
基本は淡々とした語り口だが盛り上がる場面ではやや饒舌になり、主人公と読み手が同調しやすいよう演出されているので(無駄に紙面を費やさずに)リーダビリティは高い。
ソラリス」に見られたような幻想性や神秘性は影をひそめ、物語は現実的な問題解決(の試行錯誤)終始する。人間の思想認識の滑稽さや皮肉さを強調しつつメッセージ性は伝わるが作者の明確な意図はよく判らないまま小説は終わる。
宇宙船に冠せられた「無敵」という称号が皮肉めいていていかにもこの作者らしいと思った。
まぁ、小難しいことを考えなくても伏線やプロットなどに見られるミステリ的要素を楽しんだり、詳細に描写される宇宙船着陸シーンや人類がもつ最強戦車のドンパチを面白がったりしていればいいでは。