ストリンガーの沈黙 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

ストリンガーの沈黙 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

SF。傑作SF短編集「ウロボロスの波動」の続編であり、世界観と一部登場人物が共有されている。
内容の方に触れると、物語の要素は大まかに言って
「ファーストコンタクト?テーマ」
「SFミステリ」
宇宙戦争シミュレーション」
の3つに分けられる。
以上の要素が絡み合いながら物語は進行する。それらの筋がラストにおいて一点に集約する構成が素晴らしい。
前作に引き続き今回も専門用語が頻出。さらにその用語の説明(解説)も簡潔なものに終止するため(前作を読んでから時間が経っていることもあって)文意を汲むのに苦労した。
ちなみに前作を読まないと世界観や専門用語のみならず今作の事件に関する重要なファクターが理解不能なのでこれから読まれようとする方は注意されたし。
「地球圏とAADD」という構図が「人類とストリンガー」という構図と同じく、異なる文化、知性体同士の二項対立になっている。
今作における「地球圏側の人間とAADD側の人間の描写の差異が恣意的」という事実はこの対比を強調するためのレトリックであろう(読んだときアシモフの「鋼鉄都市」「はだかの太陽」みたいだと思った)。
とにかく本書はまごうことなき傑作SF。激オススメ。


…しかし、社会環境の相違も大きな要因だろうけどウエッブの有無でそこまでパーソナリティに変化があるのかね。