クドリャフカの順番―「十文字」事件

クドリャフカの順番―「十文字」事件

ミステリ。おなじみ古典部メンバーが文化祭で起こった事件やイベントに東奔西走(大袈裟)する。
文系秀才がいかにも作りそうな話だと思った。本書に一貫する、人間の醜悪さを誇示するための描写(の緻密さ)が印象深い。
それはさておき、今回も堅実且つ丁寧な本格になっていて、非常に楽しめた。あざとさと紙一重の大胆な趣向がいい。
終盤には作者の手の内が透けてみえるが、それは作品が「レベルの低い本格」であることに由来するのではなく、氏の本格作家としての誠実さが几帳面な伏線という形で表れた結果であろう。
その堅実さ、丁寧さが野暮ったく感じられもするが 。


やたら身内びいきして他者を軽んじるうえ、自意識過剰なうえに小賢しいという、私が嫌悪するタイプの人間ばかりが米澤作品では多く登場する。
だからといって別に嫌いな作家ではないところが我ながら不思議だ。