例によってみくしからの転載

ハードボイルド・ミステリ。
リュウ・アーチャーが百万長者の娘を探す話。失踪した彼女の安否が曖昧なまま終盤まで物語が展開し、読者を惹きつけたままラストまで持っていく。こういった二転三転するプロットは、デクスターや法月綸太郎の作品を髣髴させる(って、作品の発表年代順から言うと逆だ)。

で、感想。
端的に言って、面白かった。
結末は大体予想通りだったけど、プロットの練り込み方が素晴らしい。
網目状に入り組んで全体を把握しにくくなっている人物相関を、一筆書きするかのようにじわじわと(単純な捜査の繰り返しによって)あぶり出していくその過程が本書の読みどころか。
個人的には「人間関係の見えにくさ」「プロットの巧緻」「ラストの衝撃」といった観点から「さむけ」のほうがスゴい作品だと思う。
それでも本書が本格推理的な構造を持ったハードボイルド小説の名作であるということは間違いない。