五つの時計―鮎川哲也短編傑作集〈1〉 (創元推理文庫)

五つの時計―鮎川哲也短編傑作集〈1〉 (創元推理文庫)

本格の核の部分を煮しめて、そのかわり物語としての面白さには犠牲になってもらった、という印象のミステリ短編集。本書に収録された各短編は、本格の馬堯将(字が出ません…)と称された作者の本領が遺憾無く発揮された名作ばかりである。
基本的には論理パズル的趣向の強い作品と、鉄道などのトリビアを核にしたワンアイディア作品の二つに分かれるのだが、どちらもフェアプレイに徹しつつも読者を翻弄するための仕掛けに満ちており、本格作品の醍醐味を存分に味わうことができる。 コアなプロパー本格を偏愛する向きには確信をもってお薦め。
話は変わるが、視点人物の女性に対する差別的な物言いは、やはり作者自身の女性への劣等意識に根ざしているのだろうか。
モテなかったのか。
悔しかったのか。