読んだ本の感想とか

死神の精度作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/06/28メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック: 148回この商品を含むブログ (657件) を見る連作短編集。数日中に事故や他殺で死ぬ人と、本当に死ぬか先送りにするかを判断しに…

女王様と私作者: 歌野晶午出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/08/31メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 201回この商品を含むブログ (157件) を見る本作品はこの作者らしい下世話なミステリ。 「さらわれたい女」や「葉桜〜」、「世界の終わり〜」もそ…

「秘密」東野圭吾 みすてり。この本をバイト中(待機中)に読んでいたら同僚から「初読なんですか?」と質問された。そうだよ、と答えると驚いていた。確かに高校時代から積読になっており、今まで読まなかった積極的理由はあまりない。強いて言えば「周りが…

「少女には向かない職業」桜庭一樹 ミステリ(?)。今をときめく桜庭一樹の新刊であります。どうでもいい話ですが、僕は「サクラバ」というと「一樹」や「和志」よりも「コハル」をまず連想してしまいます。五の二。ちなみに本書が初めて読む桜庭作品になり…

「容疑者Xの献身」東野圭吾 最近、読書感想系サイト(ブログ)でやたら評判のいいミステリ。東野は読むの久しぶりです。まぁ、なんていうか、尻馬に乗るようで気恥ずかしいのですが、「傑作だった」と、ぼくにも言わせてもらいます。 この作品は倒叙ものであ…

「ホムンクルス」山本英夫 この人の作品は大抵プロトタイプの方が僕の好みに合っているんだけど、その理由はよく分からない。多分、長編の方はいかにも「頭のいい人が考えた話」になっているところが鼻についたんでしょう。 で、この漫画なんですが、京極の…

「タイム・リープ」高畑京一郎 SF。ライトノベルはあまり好みではないけれどジュブナイルは好きという僕にとって、こういう作品はかなりツボです。そういえば「基本は学園ラブコメだ」と西川魯介が言っていたなぁ。 ストーリーや設定はあまりに有名なのでこ…

「あなたに似た人」ロアルド・ダール 賭博をメインテーマに据えたミステリ短編集。「ジョジョの奇妙な冒険」のダービーはこの作品にインスパイアされて出来たキャラクターでしょうね。 ほとんどの短編は、いわゆる「奇妙な味」系列のミステリである。賭博の…

「ドロヘドロ」林田球 小学館の雑誌、「IKKI」で連載している漫画。そらとぼけたキャラクターたちと、卓越したセンスで紡がれる台詞回しが、その独特の世界観と相まってほのぼのとしたグルーヴを作り出している。ストーリー展開で(読者を)引っ張るタイプの…

「天空の秘宝」ウィリアム・C・ディーツ アドベンチャーSFというのはSFガジェットを用いて書かれた冒険小説という理解でいいのでしょうか。 本書の内容は「賞金稼ぎの主人公が政府に依頼された仕事をこなしているうちにあれよあれよと人類の存亡を賭けた陰謀…

「誰のための綾織」飛鳥部勝則 ミステリ。やりたいことは分かるんだけど、消化不良なところが多い作品ですね。 最初の場面で読者を身構えさせてしまう構成になっているので、勘のいい人とミステリずれした人には作者が何を仕掛けようとしてるのか丸分かりに…

「バベル17」サミュエル・R・ディレーニイ SF。ディレイニーは敬遠していた今まで作家である。理由はなんとなく小難しそうな作風だと思ったから(だって大学教授だし)。実際に読んでみると(すこし衒学的なきらいはあるけれど)スペオペを基調にした普通の…

「犬はどこだ」米澤穂信 ミステリ。結論から言えば、今までに読んだ米澤作品中で個人的にベスト。 本書は見せ方にこだわった作品であり、どうすれば事件を魅力的にプレゼンテーションできるのかを念頭に置いて書かれたものであろう。多視点による語りの導入…

「太陽の簒奪者」野尻抱介 はあどSF。本作はファーストコンタクトSFであり、(ある種必然的に)コミュニケーション論をあつかった作品となっている。 本作の主人公の行動の背景には「危機的な状況の回避」と同時に「対象を理解、共感したいという願望、…

「ガラスの村」エラリイ・クイーン ミステリ。本書はエラリイやレーンが出てこないノンシリーズものである。解説によるとアメリカの片田舎で起こった殺人事件に発表当時の社会風潮を盛り込んだ意欲作であるらしい。 伏線の周到さやロジックの厳密さは全盛期…

「ビアス短篇集」 ミステリ以外も読んでみよう企画の一環。 騙りのテクニックとか皮肉な結末などの要素が、「奇妙な味」系のミステリに一脈通ずるような気がする。というかポゥの系譜なんだろうけど。 余談だが、バイト先でこの本を読んでいたとき、番長に(…

「悪徳警官はくたばらない」デイヴィッド・ローゼンフェルト 法廷ミステリ。一作目を読んでいないのに安かったから買って読んでしまった。 本書は非常に口当たりのイイ作品に仕上がっている。文章は洒脱で気の利いた台詞が頻出するし、キャラクターも主人公…

「神様ゲーム」麻耶雄嵩 他所の書評でも取り上げられることの多い本作品であるが、それらを総合するとどうやらファンには必読の書らしい。そこまでいうなら、と麻耶ファンを自認(他者に承認されるほどではないらしい)するわたくしも手にとってみた。 なん…

「ニッポン硬貨の謎」北村薫 本格ミステリ。日本の新本格ミステリの書き手には「クイーンに対する敬愛や憧憬の念」を表明されている方が少なくありませんが、本書ほどその情念が全面に押し出された作品は少ないのではないでしょうか。とにもかくにもクイーン…

「グラン・ヴァカンス」飛浩隆 えすえふ。 「人間が来客しなくなって1000年経つ、ヴァーチャルリアリティ空間内に存在するリゾート地があり、そこではAIたちが同じ1日を何度も繰り返し過ごしていた。しかしある日、千年間何も変化のなかった日常を破壊する…

「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー ハードボイルド。今までハードボイルドというジャンルにはあまり手を伸ばさなかったため(原りょうくらいしか読まない)これが初めて読むチャンドラー作品である。 で、この世界的超有名作の感想なのだが、はっきり…

「がじぇっと3」衛藤ヒロユキ 最新刊は最終刊でもあるんですね。伏線を急ぎ足で消化しているのが悲しかったっす。でも、設定に凝った作りだったけど綺麗に回収して完結してました。連載期間が短かった分、設定を忘れないで描けたのかも。 「グルグル」とか…

「扉は閉ざされたまま」石持浅海 倒叙ミステリ。実際に何か事件が起こったのか登場人物たちには確信が持てないので、密室を破らないまま探偵が真相を推理をするところが本作の特徴。伏線の張り方には感心させられるし、ラストのややひねくれたオチも楽しい。…

「弥勒の掌」我孫子武丸 ミステリ。本書は異なる登場人物二人が(同一の新興宗教に関与していたらしき)近親者の失踪&殺人事件に巻き込まれていく様を描いたサスペンス色の強い作品である。 しかし一発ネタに偏向したプロットといい、主要登場人物の魅力の…

「象と耳鳴り」恩田陸 ミステリ。それも非常にこの作者らしいミステリ。 恩田陸作品全般の特徴として、作者の考えや思想が作品内(登場人物など)にもろに表出されてしまうという点が存在する。それは恩田陸の小説の書き方、感性に従って本能的に書くという…

「奇想、天を動かす」島田荘司 個人的には、社会派ミステリ風リアリティとアクロバティックな物理トリックって食い合わせが悪いと思う。 本書も犯人の過去が明らかになっていく過程と島田理論による謎の提示と解体の場面とがチグハグな感じに。 それぞれ単体…

「模倣の殺意」中町信 とてもスタティックな本格ミステリ。 時代を考慮に入れなくてもそこそこ楽しめると思うが、やはり似たような作品を先に読んでいると驚きは半減。伏線や構成を吟味して楽しみましょう。 しかし、某ミステリ作家(本書の版元からデビュー…

「タフの方舟2天の果実」ジョージ・R・R・マーティン 「タフ」完結編。やっぱり面白い。くやしい。ちなみにわたしはイーガンもチャンも好きです(帯参照)。 作品単体でのバランスは上巻の方がいいと思う。発表時期の問題もあるでしょうが。

「タフの方舟1禍つ星」ジョージ・R・R・マーティン 本書の作品は非常にスタンダードな設定ばかりで、道具立てもにも卓抜した独創性は感じられない。それなのに話の組み立ての巧さとキャラクターの魅力によってこんなにも面白いSFになるとは! ある程度展…

「ダブル/ダブル」(編者失念) ふたごやドッペルゲンガーをモチーフにした小説のアンソロジー。 「ゴーゴリの妻」面白すぎ。